最終更新日:04.04.04
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山内昌之・増田一夫・村田雄二郎編『帝国とは何か』岩波書店 1997年 ISBN:4000027123

(c)岩波書店
 あとがきにもあるように,この本は東大駒場の1994年度冬学期統一テーマ講義にもとづく論文集である。とは言っても「知の技法」的なレベルのものではなく,現代のホット・イシューについて当代随一の論客が挑んだ非常にクリティカルな書物である。

 増田氏の「帝国の地平」と題された「序」に始まり,第I部は,山内昌之「帝国の遺産―湾岸危機とパクス・オリエンティカ―」,松浦寿輝「帝国の表象」,柴田元幸「アメリカ文学と帝国主義」,増田一夫「共和国の二重の身体―フランス普遍主義と帝国の子供たち―」,村田雄二郎「中国皇帝と天皇―二つの比較視座―」が収録されている。なかでもカフカの「皇帝の綸旨」というテクストを題材に,「不可視の帝国」論を繰り広げた松浦論文と,清末辛亥革命前に国民国家への変容を目指した清国立憲運動に明治立憲制の影響を鋭く指摘した村田論文は面白かった。

 第II部は,第I部に比べて,書き手がややベテラン。木村凌二「遊牧のローマ帝国」,鈴木董「多様性と開放性の帝国―オスマン帝国―」,石田勇治「帝国の幻影―神聖ローマ帝国からナチズムへ―」,木畑洋一「帝国の残像―コモンウェルスにかけた夢―」,山室信一「民族協和の幻像―満洲帝国の逆説―」といずれも力作揃いである。

 さいごに結びとして山内氏の「帝国ふたたび」が掲げられていて,読者の便をはかっている。

 ところで,「帝国」というとマルクス・レーニン主義的な「帝国主義」論をすぐに思い出すが,ここではまったくそれには触れられておらず,編者のスタンスの一端がうかがえる。それはもっともなのだが,シュンペーターの「帝国主義と社会階級」などもまったく触れられていないのはいかがなものであろうか?


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