最終更新日:04.04.04
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宮部みゆき『理由』朝日新聞社 1998年 ISBN:4022572442

(c)朝日新聞社
 宮部みゆきは,いま若手では一番,読ませる作家の一人ではないだろうか。

 この「理由」という作品も,現代家族の崩壊を斬新な角度から切り取り,見事なミステリーに仕立てている。(事件関係者へのインタビューを交えたルポルタージュという叙述形式は,慣れるまでちょっと戸惑ったが)

 前にこのコーナーでも取り上げた「火車」でもそうだったのだが,宮部みゆきという作家の「経済感覚」は非常に鋭い。というよりも,現代の様々なテーマを取り上げるとき,「経済問題」は避けて通れないのだが,そこをうまく取り入れて,見事に「作品」に仕上げている。登場人物に対するリアリティの付与の仕方が画一的ではなく,非常に巧妙なのである。

 SFなども科学技術ばかりのドラマは,どれだけ精巧に取材していてもそれだけでは,未来小説にはなりえない(SFが必ず未来小説である必要はないが)。技術が入り込んできたときに,そこで繰り広げられるであろう人間関係にどのような変化が出てくるのかをきちんと描かないと,ドラマは平板になってしまう。

 ミステリーも然り。本当に怖いと思わせるには,それなりの「社会」の描き込みが必要不可欠なのである。


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