最終更新日:04.04.04
[← NAKAMURA Muneyoshi Lab. Top Page]
[← index]

坂本多加雄『近代日本精神史論』講談社学術文庫 1996年 ISBN:4061592467

(c)講談社
 既発表論文7編を収めた文庫オリジナル。第一部は,"近代日本の時間体験","「企業者」観念の発見と日本の伝統","「英雄」の時代とその終焉","「思想」への不信から「言葉」への信頼へ",と題する日本の近代精神史に関わる諸問題を取り扱い,第二部では福地桜痴,徳富蘇峰,中江兆民が扱われている(『市場・道徳・秩序』(創文社,1991年)でも徳富蘇峰・中江兆民は扱われていた)。

 なかでも第一部の"近代日本の時間体験","「企業者」観念の発見と日本の伝統"は本書の白眉をなしている。特に山路愛山や蘇峰などの伝統的から継承した言語や観念のなかに,広義の「企業者」的観念を成立させる可能性が秘められていたのではないか,との仮説を検証した"「企業者」観念の発見と日本の伝統"は必読である。

 ただし,田口卯吉に対する坂本氏の評価は,概して低い。田口の市場経済を「平均の勢」を求めて均衡に至るものとした解釈は,確かに「宿命論」的な色合いを帯びたものであろう。しかし,それが日本の「伝統」的な秩序観と切断されたところに出てきた(つまり,マンチェスター学派の無批判的導入)とすることに対しては留保が必要であろうと思われる。


Amazon.co.jp から注文

© 2004 NAKAMURA Muneyoshi. All rights reserved.