最終更新日:04.10.13
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野口武彦『新選組の遠景』集英社 2004年 ISBN:4087747131

(c)集英社
 著者はこの本の中で,「新選組の剣士たちは,戊辰戦争の敗者となった旧幕府側のプライドと美学を一身に請け負う国民的英雄に成長した。明治維新から百三十五年の歳月が流れる間に,繰り返し語られる歴史ロマンの主人公になり,本紀と列伝,あるいはむしろ本紀と銘々伝をそなえた叙事詩の世界が形成されたといってよい。新選組ファンのあらかたは天動説である。新選組を機軸として歴史の天空が回転するのだ。/……その新選組を遠景にして眺めると,幕末史からはまた違った真実が見えてくるのである。新選組のことは,新選組だけを見ていたのではわからない」(15〜16ページ)と述べている。まさに卓見である。


 明治政府側から長く「賊徒」とされてきた新選組の「見直し」が始まったのは,子母沢寛の『新選組始末記』(1928年),『新選組遺聞』(1929年),『新選組物語』(1931年)が出版されたのを期としている。(この点に関しては,先日たまたま手にした成田龍一『<歴史>はいかに語られるか−1930年代「国民の物語」批判』NHKブックス,2001年,でも第1章の冒頭に触れられているが,同書についてはまたあらためて)。戦後,子母沢の新選組をベースにしながら,司馬遼太郎はそれをさらに高度成長期の「国民の物語」として描き直した。

 この本は,それら国民的ロマンとしての新選組ではなく,一歩距離を置き「史実そのもの」の面白さを語ろうとしている。さらには新選組を語ってきたわれわれの視点を相対化してゆく方法を取っている。

 著者は,「大義」「誠」「武士道」などの常套句を使わないように心がけたと言う。新選組を語る際に「男の美学」を抜きにしては……とおっしゃる向きには,是非,本書で新選組の新たな側面を発見してもらいたい。

 全7章どこを取っても面白いし,また全7章の流れの中で,新選組がなぜあのような結末を迎えざるを得なかったのかについて,これまでとは違った観方を獲得できること間違いない。


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