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明田鉄男『維新 京都を救った剛腕知事:槙村正直と町衆たち』小学館 2003年 ISBN:4096260754
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幕末の京都は,維新の志士たちや新選組が活躍するドラマチックな舞台としての印象が強い。しかし,同時に維新の戦乱は千年の都京都に大きなダメージを与えた。さらに追い討ちをかけるかのように「東京遷都」のショックが京都を襲う。その後の京都浮沈を占う画期が維新期にあったことは間違いない。 本書は,明治初年代,京都府庁にあって府政を切り盛りした長州人,槙村正直(第二代京都府知事)に焦点を合わせながら,京都の再生と近代化への道程を描く。 槙村が事実上先導していった近代化事業は枚挙に暇がない。全国初の小学校の開設をはじめとして,女学校や病院,図書館や勧工場(常設の物産展示販売場)の設置,博覧会の開催などが挙げられている。 しかし,これらの事業が典型的な「上からの近代化」の形を取ったのかと言えば,決してそうではない。槙村の施策に呼応した「町衆」と呼ばれる京都の商工業者たちの存在と活躍があってはじめて近代化事業は軌道に乗ったからである。そもそも官と民の職掌分担に,はじめから明確な線引きを示す青写真があったわけではない。そこに維新期ならではの面白さもある。 ベンチャー企業家出現の事例などもその一つであろう。一昨年ノーベル化学賞を受賞した田中耕一氏の所属する島津製作所の創業者・島津源蔵も維新期京都が生み出したベンチャー企業家の一人であった。源蔵は槙村からの軽気球打ち揚げ要請に見事応えて,京都における近代産業発展の方向性を示した。 伝記類が残されていないがゆえに,槙村はこれまでどちらかと言うと同志社新島襄の敵役の強権知事として描かれることが多かった。槙村の京都再生の功績に光をあてた本書は,その意味でも有益な一書である。
『週刊東洋経済』2004年2月7日号掲載
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