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宮部みゆき『火車』新潮文庫 1998年 ISBN:4101369186
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「火車」とは,「火の車」ということ。多重債務による人生の崩壊をテーマにしたミステリー。まさにこれは「経済小説」でもある。 サラ金規制法以来,悪質な取り立てを伴うサラ金絡みのトラブルは減っているが,多重債務による自己破産申告は,増加の一途をたどっている。昔ならば夢を実現するのに,我慢するかあるいは実現に向けて努力するかしかなかったのだが,今は「お金」でそれが買えてしまう。そこにこそ問題があるのだと作者は作品中で何度も登場人物に言わせている。 また脇筋で,主人公の子供のかわいがっていた犬が,その友達に殺されるという事件が起こる。「本来あるべき自分になれない」「本来持つべきものがもてない」という忿懣を,爆発的に,凶暴な力でもって清算する−という形で犯罪をおかす人間があまた満ちあふれることになるだろうと子供に教えなければならない,と思う主人公(警察官)の予言は,神戸の小学生殺人や今年に入ってからの小中学生によるナイフ殺傷事件の多発を予告しているようでもある。 経済小説として,ミステリとして,そして何より上質の人間ドラマに仕上がっている。
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