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宮崎正勝『鄭和の南海大遠征―永楽帝の世界秩序再編―』中公新書 1997年 ISBN:4121013719
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鄭和の南海大遠征は実に27,000名,60余隻からなる大艦隊でおこなわれた大事業であった。逆にいえばそうした大艦隊が南シナ海からインド洋を経てアフリカ大陸にまで達しうる海の交通ルートが当時すでにできあがっていたということでもある。 筆者は8世紀後半ムスリム商人たちのダウ船によって「第一次大航海時代」がアジアの海に現出し,次いで10世紀後半から11世紀になると「ジャンク」という外洋帆船を使って中国人商人(広東,福建,浙江)が海に乗り出していいき,「第二次大航海時代」が始まったと述べる。 この第二次大航海時代には中国の陶磁器がアフリカにまでもたらされる,いわゆる「陶磁器の道」が形成される。更にモンゴル大帝国が出現する13〜14世紀には陸と海のユーラシア循環の一環としてジャンク船とダウ船のネットワークは位置づけられ,ここにユーラシアの大交易圏ができあがっていくことになる。 また,このころマラッカ海峡とスマトラを境に「西洋」と「東洋」という言葉がはじめて登場する。しかし元朝が滅んだ後,明帝国は農本主義と海禁政策を実施し,朝貢体制という中華秩序のなかにダウ船・ジャンク船貿易ネットワークを組み入れるべく,宦官鄭和を派遣していくことになった。鄭和の遠征は「第二次大航海時代」の黄昏を彩るエピソードをわれわれに提供する。
小著にもかかわらず,随所に地図が挿入され門外漢にもイメージしやすく工夫されておりよかった。また第10章では鄭和艦隊が実際に用いた「海図」を援用しながら,南シナ海・インド洋(ジャワ海/ベンガル湾)・インド洋西部(モルジブを経てアラビア半島・東アフリカに達する)の三つの海域にわたる海洋ネットワークの姿を実に生き生きと描写しているのはまさに圧巻と言えよう。
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