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塚瀬進『満洲の日本人』吉川弘文館 2004年 ISBN:4642079335
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満洲と聞くと、傀儡国家「満洲国」をすぐに思い浮かべる。しかし、それ以前から満洲の地には多くの日本人が渡り、生活を営んでいた。 本書は、一九世紀末から一九三一年の満州事変勃発までの時期を対象に「満洲国以前の満洲」における在満日本人の生活実態を詳細に描いている。 従来の満洲史研究では、宗主国と植民地の「帝国主義的な」関係性がまずあって、そこから在満日本人の活動が捉えられ、理解されていた。本書はそうした公式的な理解の枠組みからは見えにくかった在満日本人の活動を、満洲が在満日本人に与えた影響と、在満日本人が満洲に与えた影響の両面を意識しつつ、統合的に理解しようと努めている。そこから浮かび上がってきた当時の日本人の海外での活動の特徴は、戦後六〇年近くが経過した現在のそれと、多く重なり合っている。 満洲という「外国」にありながら、あえて割高な日本人商人の店で生活用品を買いそろえ、米のメシと魚を食い、子どもを日本人学校に通わせた在満日本人たちの姿は、現在の日本人ビジネスマンたちの在外生活とも共通する部分があるだろう。 しかし、このような生活は、空間的な意味での「外国」生活ではあっても、現地社会とのつながりを生みださない。このつながりの希薄さが、最後の最後まで他者への理解を妨げていた。また現地社会とのつながりの希薄さは、関東州や満鉄付属地を踏み出たところにある「外向き」の行動の困難さを増し、一層、在満日本人に日本人社会内部の救済の論理に依存した「内向き」の行動を取らせた。 本書は、在満日本人という素材を扱いながら、今なお、海外で日本人が生きるとはどういうことかを考える上で示唆に富んでいる。
『週刊東洋経済』2004年11月13日号掲載
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