最終更新日:04.04.04
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原洋之介『アジア・ダイナミズム―資本主義のネットワークと発展の地域性―』NTT出版 1996年 ISBN:4871884848

(c)NTT出版
 原氏はこの本のなかでたとえば世銀編『東アジアの奇跡』(東洋経済,1994年)にみられる開発経済学の立場を批判し,アジアの経済発展を考える方途として,F.ブローデルの「資本主義・交換経済・物質生活」という概念を援用する。このブローデルによって示された「資本主義・交換経済・物質生活」という,諸社会に共通する「3階層」の同時性・共時性にこそ歴史のダイナミズムと発展の地域性をみようとするのである。

 またもうひとつ原氏の「導きの糸」となっているのが,ヒックスの『経済史の理論』などで展開される「商人的経済」論である。経済発展が「市場経済」という「制度」の歴史的形成の過程であるとするならば,その中心に位置する「商品市場」と「金融市場」,そしてそれらの歴史的・地域的担い手であるヒックス流の「市場取引様式」を自ら作り出す商人,さらにそのなかから生まれてくる“金融業者”,そして彼らが作り出すネットワーク,それらの分析が必要不可欠であるという認識になろう。

 ヒックスの「商人」がワルラス的「せり人」とは異なることを強調して,むしろシュンぺーター流の「企業者」に近いものであるとの指摘には同感である。そして,シュンペーターもまた銀行業(信用供与)の重要性を強調しているのである。

 非常に手際良く最近の研究動向を踏また上で,地域研究の成果も合わせながら,刺激的な問題提起をおこなっている本著は,アジア社会に関心をもつ一般の読者にも益するところ大であろう。


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