最終更新日:04.09.21
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『帝国書院版の復刻版地図帳 地図で見る昭和の動き』4巻セット帝国書院 2004年 ISBN:4807154443

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 中学校時代、社会科(戦前は「地理」)の時間に帝国書院版の地図帳で勉強された方も多いだろう。本書は、同社が発行してきた昭和九年版『増訂改版 新選詳図 帝國之部』、同『増訂改版 新選詳図 世界之部』、昭和二五年版『中学校社会科地図帳』、昭和四八年版『中学校社会科地図帳 最新版』の四つの地図帳を復刻、解説書を付したものである。学習用地図帳という性格上、地誌的な要素、各種統計データも数多く盛り込まれている。昭和戦前期、占領期、そして高度成長期と三つの時期に対応したこれらの地図帳を通じて「昭和の動き」を見ようとする企画が、まずもって斬新だ。

 四冊の地図帳をざっと眺めると、戦前期の地図帳の意外な美しさに驚く。四八年版が紙質、色合いともに優れているのは言うまでもないが、戦前期の地図帳も美しい。それに対して二五年版で空白になっている「北方領土」はやはり異様に感じる。四八年版ではしっかり日本の領土として表されているが、学習用地図帳にも時々の政治が反映されている。

 九年版『帝國之部』には「第四圖 世界に於ける帝國の位置」と題して外国船航路図や各種旗章が掲げられている。船による世界の結びつきが、世界の交通の中心であったことが看取できる。天皇旗や皇室旗と並んで、日本郵船旗や大阪商船旗なども掲載されているのは面白い。「第六九圖 軍備」には、日本陸海軍の師管区、海軍区と各師団司令部なども掲載されている。

 二五年版には「家と家庭生活」と題するページがあり、「新しい台所の生活―こんな能率のあがるような生活を考えよう―」など、一見、地理の学習とは無関係にみえる資料も挿入されている。当時、新しい教科であった「社会科」の総合的な性格が反映されている。高度成長期以前の家庭の台所にはもちろん冷蔵庫はなかった。

 評者がお世話になった四八年版では、各種産業地図や「国土の高度利用と総合開発」を示す地図が目を引く。全国に張り巡らされていく鉄道幹線や高速道路、建設予定もしくは計画路線も盛り込まれ、国土の急速に変わりゆく姿を子供ながらに想像したことを思い出す。同時に公害による汚染地域なども同図には掲載されている。高度成長の明と暗が地図帳にも反映されつつあった時代だ。

 学校教材として用いられたこれら地図帳は、多くの人にとって日本と世界の全体像を把握する最初の羅針盤となっているはずである。自分が教わってきた地図帳をもう一度見直してみてはどうだろうか。

『週刊東洋経済』2004年9月11日号掲載

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