「東京大学で1、2年生の教育を担当する教授陣全員が持っている冊子には、次のようなことが指示してある。
〈息抜きする機会を〉
某大学で非常勤をしていたとき、90分授業の間に5分間休憩を取ってくれと言われて、それをやったらあっという間に3分の1がエスケープした。その昔、駿台で「政治経済」を教えたことがあったが、そのときは45分間授業が集中度を高めて効果的だった。「息抜き」が効果的かどうかはその大学の学生の質や授業の内容にもよるだろう。
〈ユーモアを交える〉
ハァ?
〈一本調子の声はダメ〉
強弱、濃淡、緩急が大事だとはわかってはいるのだけれども……。
〈ノートを取りやすい黒板の使い方を〉
その前にちゃんと前に座れよ。ゴルァ
冊子は「授業担当のための必須マニュアル」。学生が授業に興味を示さなくなった、という危機感から、教官チームで一昨年からつくり始めた。
ご苦労様です。市販はされていないのでしょうか?
「最近の学生は、と文句を言っていても仕方ない。教える側が変わらないと」。作成した川口昭彦・前教授は言う。
こう言っては大変失礼だが、変われる先生と変われない先生がいらっしゃるのが実情では……。
京都大が実施している学生生活実態調査では、自習時間ゼロの学生が増え続けている。
自分の学生時代を振り返っても、授業のための自習ってあまりしなかったような気が……。
溝上慎一講師(教育心理学)によると、「自分で課題を見つけて学ぶことのできない学生」が目立つ。昨年、こうした学生向けに「学び支援プロジェクト」として、全学共通科目のゼミを半年間開いた。
約20人の学生が参加した。「自分は授業には出るが、それ以上学ぶ気がしない。なぜだろう」。4、5時間話し合う。問題意識を出し合うなどして、自分に何が欠けているのかを探す授業だ。
基礎ゼミでもやってみたい気がする。
+++++++++
「講義についてこない。高校生レベルでしかない」。学生の「異変」を嘆く声が、どの大学の教員からも出る。
大きな原因の一つが、大学をめぐる環境の変化だ。大学・短大の進学率は60年代半ばまで、2割に満たなかったが、現在は5割近い。「大学は十分すぎるほど大衆化した」と東大の「必須マニュアル」でも触れる。
少子化が重なる。18歳人口が減り、定員を満たせない私大は3割に迫る。09年には進学希望者と入学者数が一致する「全入時代」がくる。
表題にも使われているが、「全入時代」という言葉は誤解を招くのでやめたほうがいいと思う。
高等教育の支援機関である文部科学省メディア教育開発センター(千葉市)の小野博教授のもとには、外国の大学での補習教育のやり方、日本での取り組みの資料がほしいという、大学教員からの問い合わせが相次ぐ。国公立大や、有力私大からもあるという。
センターは昨年、全国の延べ20万人近い中高生に国語、英語、数学のテストを実施した。その得点を指標に、大学が同じ問題を学生に解かせれば、どの段階のレベルかがわかり、補習の計画がたてやすくなる、というわけだ。
日本工業大(埼玉県宮代町)は、センターの協力で日本語の基礎学力判定テストを実施。中学生程度とされた新入生を対象に「文章能力開発演習」を始めた。
平仮名ばかりの文章を漢字交じりにし、句読点をつけ、カッコや記号を加え、段落も考える。外国人に日本語を教える手法を応用したという。
うちの大学もやったほうがいいのかも。まず、ちゃんと自己のレベルを知り、それに応じた学習をというのは当たり前のことだから。
+++++++++
「生活指導」も必要になった。九州国際大(北九州市)では、キャンパスからいつの間にかいなくなり、中退する学生が増えている。対策として昨年秋、お茶を飲み、音楽を聴きながら漫画も読める部屋を新設した。
職員が常駐し、勉強や就職、人間関係などあらゆる相談に乗る。「高等教育機関というより中高の延長。発想を切り替えるしかない」と大学幹部は話す。
これと関係するかどうかわからないが、大学の郊外化が進み出した頃、学生の溜まり場がどんどん少なくなってきているように思う。本屋のオヤジや喫茶店のマスターといった大学にとって重要なサブキャラが失われてしまった。……大学内のこうした空間だけでなく、街ぐるみの大学活性化が重要なのだろう。
大学・短大進学率が6割の米国では、40年以上前から大衆化に直面してきた。
単位取得が難しいなど、日本とは違う事情もあるが、学びやすい環境を整え、学生を大学にとけ込ませることは、大半の大学で大きな課題だ。研究に重点を置く大学でも銀行の使い方やレイプを防ぐ方法まで教える。
そう言えば、最近「最終和解案」という詐欺メールが横行しているそうだ。詳しくは、こちら。引っ掛からないように注意しましょう。
「大学がエリートだけのものではない以上、多様な学生を効果的に教える方法を常に考えるのは当たり前だ」。教育学者でコロンビア大教授のトーマス・バリー氏は話す。いま、日本の大学にも通じる言葉だ。
で、最後はアメリカ出羽守かい?