12月31日予報では旅行前半の天気があまりよくないということだったので心配していたが,朝起きると窓から青空が広がっていた。
朝食は,ジョルジオの宿でジャムやリコッタチーズのクリーム,チョコレートなどが入ったクロワッサンとクッキー,エスプレッソコーヒー。ジョルジオによるとこれが典型的なシチリアの朝食だとか。朝からお菓子を食べているようだったが,私としてはもちろん満足。
さて,この日はパレルモからバスに20分ほど乗って,モンレアーレの街にあるモンレアーレ・カテドラーレへ。まずは附属の修道院へ。ここは回廊で有名で,228本の柱は1本1本異なった幾何学模様のモザイクで飾られている。その見事さに圧倒されながら,隣の1172年にウイリアム2世によって建てられたカテドラーレへ。内部は一面にキリストや旧約聖書・新約聖書の物語などを描いた黄金色に輝くモザイクで埋め尽くされている。前日のパラティーナ礼拝堂のモザイクも素晴らしかったが,ここはそれを上回る規模に圧倒される。まさに「冥土の土産になる」という趣きである(宗教が違うが)。内部は薄暗いが,誰かが機械による説明をきくためにコインを入れると堂内が照らしだされる仕組みで,明かりが消えると誰ともなくコインを入れていた。我々も2回ほど貢献した。
途中天気が悪くなり,雨に降られたものの外に出ているときは何とか雨も上がり,効率良く観光することができた。
一段目左が修道院の回廊の中庭。右がその回廊の柱。モザイクが見事。
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二段目左がカテドラーレ内部。右が逆側の壁面
三段目左 モザイクで聖書にちなむ場面が描かれている。右 上から見た中庭
四段目左 カテドラーレ付属クロチフィッソ礼拝堂 天井の彫刻が見事 右 彫刻の後ろの波も大理石
昼食は街のバールで,アランチーニを1個ずつとコーラ。ちなみにアランチーニとは,いわば中央にひき肉やチーズなど具を入れたサフラン・ライスのおにぎりに衣をつけて揚げ,さらにオーブンでこんがり焼いたもの。シチリアの代表的な料理の1つである。
午後はモンレアーレからパレルモに戻り,市内観光の続き。15世紀に建てられたアヴァテッリス宮殿内に作られたシチリア州立美術館を訪れた。ここには,シチリアを代表する画家のアントネッロ・ダ・メッシーナの「受胎告知」や,作者不詳の「死の凱旋」などの名画がある。数多の聖母子像や,表に十字架にかけられたキリスト像,裏に復活したキリスト像が描かれた大きな木の十字架も面白かった。絵画に増して素晴らしいのはその建物とその展示の仕方。美しい中庭からの採光があるためだろう。美術館にありがちな重厚な圧迫感はなく,伸びやかな雰囲気の中で展示作品を愉しむことができた。
もし時間があるならばぜひ訪れることをお勧めしたい美術館だが,場所がわかりにくい。われわれもガリバルディ広場のインフォメーションのお姉さんに尋ねたが,入り口も目立たないので注意。鞄などは事務所に預けて見学する。
その後,前日夜に訪れたサン・カタルド教会に行き,中に入る。ドームの中はやはりモザイクで飾られているが,フレスコ画と交互になっているところが,文化の融合を感じさせて面白い。また,ドーム屋根の低い部分に夜空のモチーフのモザイク画(濃紺のモザイクに星が配されている)が描かれ,それより高いドームに聖人やキリスト像が描かれているところが興味深かった。
続いてチェスタ・デル・ゲス教会のまたもや素晴らしい大理石の彫刻を堪能したあと,サン・ジョヴァンニ・デッリ・エレミテ教会へ。ここもアラブを想起させる赤いドーム屋根の教会だが,内部には何もなかったので,ここは外から見るだけでもいいかもしれない。
モザイクとフレスコ画が混在しているのがわかる。
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この日もよく歩いたので一旦宿に戻る。ひと休みしたあと,パレルモの大晦日を楽しむために,新市街のカステルンボ広場へと向かう。これまで歩いた旧市街と個となり,新市街は広い道路が碁盤の目状に走っていてわかりやすい。また,メインストリート沿いには高級ブランド店が軒を並べている。
広場を目指して歩く途中で,マッシモ劇場に出くわした。修復が終わったばかりのマッシモ劇場は,エントランスまで幅の広い階段を上がってアプローチするようになっており,道路と同じ平面に建つウィーンのオペラ座やロンドンのロイヤルオペラハウスより,堂々とした印象を受ける。クリスマスイリュミネーションの電球でふちどられたシュロなどの木が劇場に華を添えていた。本当はマッシモ劇場でオペラ観劇,といきたかったのだが,休演中のため断念した。
「劇場の近くには美味しいレストランがあるはず」と,近くで夕食をとることにした。ふらりと入った店は,黒っぽいシャツとトラウザーというキザな服装のオーナーの店だったが,丁寧に英語でメニューを説明してくれた。この日の夕食は,前菜が夫がエビのカクテル,私がエビのフリッタ,1皿めが夫がフィットチネとアカザえび,私がリンゴのシロップ煮みたいなものを包み込んだラビオリにホワイトソースがかかったもの。メインが私が車エビ,夫が魚の切り身(何か忘れてしまった)のソテー。ワインはシチリアワインの白。美味しゅうございました。エビのカクテルは,実はロブスターのカクテルで,ぶつ切りにしたロブスターとシュリンプが入っていた。1年の終わりを美味しい魚介料理で〆られて満足。マッシモ劇場に面した何となく高そうなテラス席ありのリストランテのすぐ裏手にある。
腹ごしらえができたところで,広場に向かって歩いている。道行く人々は皆手に手にシャンパン(もちろんここでは発泡ワインを便宜的にシャンパンと呼んでいる。シャンパーニュ地方のシャンパンではない)の瓶を持っている。どこで買えるのだろうと若いカップルに訪ねてみると,シャンパンを買えるバールの近くまで一緒に歩いてくれた。
我々もシャンパンを手にして広場へ。すでに多くの市民や観光客が集まり,ポップミュージックのコンサートが行われていた。その周りのそこここで子供や若者がバン! バン!とものすごい量の爆竹を鳴らしていた。実は昨日から子供が路地のあちこちで爆竹を鳴らしていて遊んでおり,うるさいなぁと思っていたのだが,いつものことではなく大晦日ならではの風物詩らしい。それにしてもものすごい音量で,耳がおかしくなりそうだった(かなりでかい音量の爆竹も時折炸裂。心臓にはよくなさそう)。
広場には,ディズニーランドで売っているような帽子や綿菓子,チープな土産物を売る露店が多数出ている。そうした雰囲気を楽しみながら待ち,いよいよ新年のカウントダウン。
新年があけるとシャンペンを抜き,周りの人と酌み交わしてお祝いするところは,大昔に新婚旅行で訪れたヴェネチアと同じである。我々も,シチリア人の中年カップルとシャンペンを酌み交わし,「ジャポネ。ジャポネ」と寄ってきた若者にシャンペンをふるまった。そして,ポップスがクラシック音楽に変わり,新年の夜空に花火が盛大に上がった! しかもポリテアマ劇場の上から! 円形の劇場のまわりから,ナイアガラの滝が流れおち,背後に威勢よく花火があがる。しばらくすると,正面玄関上で真っ赤なスモークが焚かれ,立派なブロンズの彫刻が赤く燃え上がっているかのよう。「こんな演出があるのか!」と感動して涙が出そうになった。
イタリアはセンスがいいとよく言われるが,2日間のパレルモ観光で怒濤のような美しさにふれたあとの仕上げがこの花火である。センスのよい人間が育つはずである。長い歴史の中で蓄積された文化の奥深さにとにかく圧倒されたパレルモ滞在だった。 左 ポリテアマ劇場。右 後ろから花火が。
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