1月2日エリーチェ2日め。朝は晴れて徐々に雲が多くなってくるらしいことがわかったので,青い空と海を見るために早起きして朝食前に散歩に出かける。朝日を浴びたペポリ・エ・ヴェネーレ城もまた絵になる風景。サン・ジョバンに教会付近から眼下を眺めると,前日は一面霧の海だったところには青い海と半島があることがわかった。そうする間に霧が出てきて,しばらくすると霧でかくれ,またうっすらと姿を表して,不思議な感覚にとらわれる。コンピュータゲームでいえば,霧が晴れているときにだけみつけることができる島にわたり,そこで財宝にたどりつく地図を得ることができる,といったところか。
フェニキア文字が残る壁にも行ってみたが,うまくみつけることができなかった。こちらもうまくみつけられれば,先に得た地図の文字を解読することができる,といった設定が似合いそうだ。
そんな想像を巡らせながらホテルに戻り,朝食をとる。ホテルの朝食は,セルフサービスでジャムなどが入ったクロワッサンとコーヒー又は紅茶,オレンジやりんごをもらうこともできるというもの。
この日は天気の悪いエリーチェにいても仕方がないので山をおり,マルサーラの町までドライブすることにする。
マルサーラの町にでかけた理由はマルサーラワイン! デザートワインで有名である。ワイナリーをみつけるべく,まずはインフォメーションセンターを探す。町については何も調べていなかったのだが,美しいカテドラルがあったり,思いがけず魚市場を見ることができて楽しめた。とはいえインフォメーションセンターがなかなか見つからずあっちをうろうろ,こっちをうろうろ。そんなとき英語のできる人が話しかけてくれて,場所を教えてもらう。その親切に感謝。インフォメーションの人も親切で,お正月のためほとんどのワイナリーは閉まっていることと,1つだけ開いているところを教えてくれた。そうこうするうちシエスタの時間になってしまったのだが,あいているバールをみつけて,昼食はフォカッチャをいただく。
腹ごしらえがすんだあと,道に迷いながらも何とかワイナリーにたどりつく。ワイナリーというより酒蔵,という感じだった。犬にほえられたりして「入っていいのかな?」と入り口でうろうろしていると「プレーゴ!」と社長さんっぽいおじいさんが声をかけてくれた。
「プレーゴ,プレーゴ」と言われるままについていくと,酒蔵に入れてくれて,イタリア語でいろいろ説明してくれた。さっぱりわからなかった。。。。。が,「いい匂いですね」と身振りで示すと「そうだろ,そうだろ」(たぶん)と喜んでくれた。詳しい説明は社長さんもあきらめたようで「ここは何年物のタンク」とか「ここはラベルを貼るところ」といった簡単なコメントでだけで工場をずんずん進んで行き,試飲コーナーへ。5〜6種類を次々試飲させてもらった。運転があるので,夫は舐める程度で私が夫の分もぐいっといただく。甘いデザートワインだが,それぞれジューシーだったり,ブランデーに近い大人の味わいだったりとさまざま。幸せ。。。
試飲させていただいたうちの2本を指さし「これとこれください」と,『五か国語会話』の本を見ながら言う。通じなかったので,本を見せて「ココ」と指さすと,老眼らしく本を遠ざけて読もうとしてくれた。結局文字が小さすぎて読めなかったみたいだった。
それでもそういうシチュエーションで言う言葉は決まっているので,伝わり2本入りの箱に詰めてくれた。「こっちこっち。」と手招きされたので別の場所でお金を払うのかな? とついていくと,どうやらそうではないらしい。「お金はいらないから持っていけ」と言ってようにも受け取れたが,そんなことはないよなぁ。。。そうこうしていると,別の棟に連れていかれて,夫にエスプレッソを入れてくれた。夫もほんのちょっとは飲んだことになるので,シャキッとさせようとしてくれたらしい。有り難い心遣いだ。ついでに私もいただく。どうやってお金を払っていいか未だにわからないので財布を出して見せると,やはり「いらない,いらない」と言っているみたい。「いいのかなぁ」と思いつつ「グラッチェ」といってほっぺにキスをしてお別れの挨拶をすると,「こっちへ来い」と工場の方を指さす。「やっぱり払うんだよね。そりゃそうだよね」。すると何か言っている「『ワインを選べ』と言ってるんじゃない?」と夫。よくわからないまま1本選ぶ。続いてまだ何か言う社長さん。ワケがわからず突っ立っていたら,「これでいいか?」ともう1本を選んでくれた。2本入る箱に入れてくれて,またもや箱に入れて手渡されて合計4本。「もらっちゃって,いいの? ほんと?」きつねにつままれたようだ。
たぶん正月早々来る人も少なく,遠い日本から(ロンドンからだけど)来た私たちに,新年ということもあって大サービスしてくれたのだと思う。売るほどあるとはいえ(>売ってます)思いがけないプレゼントに大感激。同時につい損得で物事を考えがちな世知辛い日頃の生活態度を反省し,遠来の人を暖かくもてなすという心意気に感じ入った。改めてお礼を言い,幸せな気分でエリーチェに戻る。
途中,県道沿いのトラパーニの塩田付近で,ガイドブックによく載っている風車を発見。トラパーニを夏に訪れると,製塩風景を観ることができるそうだが,冬はお休み。ということで私たち(夫は運転中だから「私」ですね)は車窓観光にとどめた。夏といえば,マルサーラの近くにムッツィアという場所があり,船に乗るととても美しい景色と海を堪能できるそうだ。夏にこの辺りを訪れた方は是非。
さて,ホテルで少し休んだあとエリーチェの町の散策に出る。図書館の中の数室を利用した小さな美術館を見学するなど。お正月のためか教会の多くは鍵がかかっていて中に入れなかったのだが,町のメイン広場にあるマトリーチェ教会(1314年に建てられた。内部は1865年に改装)には入ることができた。パレルモで観たような豪華さはないが,簡素でなかなか趣のある教会である。
こちらのレストランは早くて7時30分,ほとんどが8時に開店するため,再度ホテルに戻り7時50分ごろホテルを出る。わりと賑やかな通りに面したレストランと,細い階段を下りて石のアーチをくぐって入るレストランとどちらにするか迷った揚げ句石のアーチのレストランを選んだら,同じレストランだった。夫は最初からわかっていたようで,私が何を迷っているのか不思議に思っていたらしい。かなり間抜けである。
メニューは,前菜は,夫はなすとチーズをオーブンで焼いたもの。私が生ハムとモッツアレラチーズ。1皿めは夫が海老とポルチーニ茸のリゾット,私がチーズ(リコッタチーズかな?)が中に入ったラビオリ。2皿めはこの日は夫がシーバスの塩焼き,私は「シーバスは昨日食べたし,これは海老でもう何回も食べたし」と消去法でまだ食べてない名前の魚メニューをたのんだら,何といか焼きだった。もちろん美味しかったのだけれど,1皿めまでですでにお腹いっぱいになっているところに,いか丸ごと一杯はちょっと辛かった。
食後のエスプレッソを愉しんでいると,ウエイターさんたちが何やら「ジャポネ」と言いながら話している。私たちのことを噂しているのだろうか? と思っていたら,こちらに来てカタコトの英語(人のことは言えないが)で「これの使い方を知っていたら教えて欲しい」と差し出したのは使い捨てカイロ。前に来た日本人客にもらったのだろうな。夫が「こうして使うのだ」と振ろうとしたので,慌てて阻止。今振ったら暖かくなっちゃうじゃない! 「暖まりたいときに振って使う」と説明したが,「1回だけしか使えない」と言い忘れてしまった。
いただいたマルサーラ・ワイン。醸造元はFrancesco Intorcia & Figli Via Mazara, 10 Marsala (TP) Italia